「本当はプロ野球選手になるのが夢でした」と語るには、フォークリフトの販売・修理・検査を手がける松尾運搬機サービス(株)の専務取締役・松尾美智緒さん(41歳)。
野球の才能を見込まれて野球推薦で大学に入学したが、肘を痛めて野球をあきらめざるを得なくなり自主退学する。
そんなとき、父で同社社長の松尾貞親さん(77歳)から入社を勧められたという。
同社は祖父が経営する自動車修理会社の専務だった父がフォークリフトのニーズに目を付け昭和45年に設立した会社だ。
目標を失った美智緒さんは、父に従い、手伝いのつもりで19歳のときに入社した。
だが、顧客から感謝される喜びを知るにつれ、仕事にのめり込んでいった。
そんな美智緒さんにピンチが訪れた。
平成11年、唯一の仕入れディーラーが代替わりを機に無理な条件を一方的に押し付けてきたのだ。
困難な状況に陥ったが、それを好機ととらえた美智緒さんは一念発起。
取引先を広げるため全メーカーのフォークリフトを取り扱い、販売も始めることを決意した。
美智緒さんは同年、フォークリフトを一度に5台売る快挙で事業を軌道に乗せた。
ところが、それから間もなくして定年退職などで従業員が次々と退社する。
そこで日頃から築いてきた人脈を辿り、若手3 人をヘッドハンテイング。
「結果的に効率良く、高い技術の仕事ができるようになった」と語る。
一難去ってまた一難。
今年、市の区画整理で移転を余儀なくされ、敷地面積も縮小した。
「でも新社屋は作業環境を考慮した間取りにしたので、作業効率アップにつながりました」と美智緒さん。
これからも野球で培った不屈の精神とチームワークで、あらゆるピンチをもチャンスに変えて成長し続けるに違いない。